寒さ厳しい夜明け 2015.2.1

きょうから2月。しかしながら、今季一番の冷え込みが各地で記録され、京都市内では積雪も観測されるなど寒さ厳しい一日となりました。

 

そしてきょうから立命館大の一般入試が始まりました。受験生には最後まで諦めず「合格」を手にできるよう最善を尽くしてもらえればと心から思います。

 

そんな本日でしたが、夜明けに大変悲しいニュースが飛び込んできました。「イスラム国」(IS)による邦人人質殺人警告事件で、解放が望まれていたフリージャーナリストの後藤健二氏が、先日の湯川遥菜氏に続き殺害されたという衝撃的な内容です。

 

先月20日以降、IS側からの一方的なインターネット動画投稿によって表面化・展開した一連の事件は邦人2名の殺害という最悪の結果となりました。ヨルダン人空軍パイロットも関連させたり、身代金要求から死刑囚の解放要求へといったIS側の人質解放条件の変更や、ヨルダンと日本といった複数国の思惑が交錯したことなどからこのような結果に至ったといえます。パイロットの命も含め、まだ事件は収束していませんが非常に残念な結果であり、ISは許されない非人道的な行動を今回も行ったといえます。

 

しかしこの一連の事件の報道を通じ、日本国内ではイスラーム教と「イスラム国」の根本的な違いの理解が進んだのではないでしょうか。それは「イスラム国」とはイスラーム教の教えに全く基づいてはいない「過激テロリスト集団」だという事実です。

 

年明け早々、フランス・パリの週刊紙新聞社襲撃事件は、イスラーム教徒を馬鹿にしたような内容の風刺画を掲載したとして過激派が行った行為でした。「過激派による襲撃」は最も許されない行為であることは間違いないですが、「『過激派』を生み出すイスラーム教は馬鹿げた宗教だ」という誤ったイメージと世界観を伴う同紙の論調は非難されるべきでしょう(かといって、これまたイスラームの教えに”忠実ではない”過激派が襲撃を行うという構造は本来おかしいですよね)。

同紙は本来のイスラーム教と、ISをはじめとした過激派を区別できていなかった、あるいは意識的にそうはしていなかったのです(そうすれば売れるから?)。

 

このような襲撃事件がおきた原因を探れば、イスラーム教とISなどの過激派は一線を画すものであると理解することが大変重要であることが見えてきます。ですから、今回の人質事件での報道がもたらした数少ない実績ではと私は考えます。

 

2015年2月1日の夜明けは受験生だけに限らず、世界にとって厳しく寒い夜明けになりました。邦人2名が亡くなったのは残念で、殺害したISは許されません。しかしこの事件の構造を表面的でなく、深層から分析し、「イスラーム教自体が危険」などという誤った理解が今後起きないことを今後は願うばかりです。

 

亡くなった後藤健二氏、湯川遥菜氏に心からご冥福をお祈り申し上げます。(阪田裕介)

 

<追記>(2015.2.12)

 

ISに拘束されていたヨルダン軍パイロットのモアズ・カサスベ中尉が焼殺される映像がインターネット上に投稿されて以降、ヨルダン軍をはじめとした連合はISへの空爆を再開しました。ヨルダン側は「報復だ」と明言しています。一連の事件は3名の命が奪われただけでなく、「暴力の応酬」という最悪の展開を見せています。非常に残念です。

 

一連の事件に限らず、ISは実際の戦闘に加え「インターネット広報」でも勢力を拡大しているのが事実です。フリーランスジャーナリストの瀧口範子氏は「今回のような事件から経験と学習を積んでメディア・リテラシーを高める必要がある」と意見しています。つまり、リテラシー力を高め、ISによる情報操作に惑わされないようにする必要があるということです。

瀧口氏の記事中にもありますが、「殺りくではなく、後藤氏の業績をシェアしよう」というBBC記者の呼びかけがあります。空爆といういわば「暴力」でISに対抗するやり方があるならば、ISによる情報戦攻撃に抗していくというような「非暴力」でのやり方も残されているはずです。(阪田)

 

参考:ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト @シリコンバレーJournal 瀧口範子

「ISIS事件で問われるソーシャルメディア・リテラシー」