海神(わだつみ) 2015.6・7月号より

 大きな声では言えないが、ある筋から盗聴テープが手に入った。テープの中身は、なんと某日の政権与党の会合の様子。ここだけの話ということで、こっそり中身をお教えしよう...

▼「国立大学への例の先月の通知。反応はどうだ?」ある議員が切り出した。どうやら議論の中心は、国立大学改革についてらしい。問われた議員が答えて「ああ、人文社会科学系学部を縮小しろ、という通知だね。やはり、大学教授からの批判は多いな」

▼すると別の議員が「文系の学問は実社会では役に立たない。そのくせ人間や社会の本質・問題点を考えようとするから批判的思考力が身に付く。簡単に批判的思考力なんか持たれてもね」と話す。どこからか「政府の批判ばかりするようになるだけだ」という声も

▼「文系を盛んにしても、批判勢力が強くなるだけだ。いつぞやの3人の憲法学者みたいな者が増えるぞ」と衆院憲法審査会で安保関連法案が、3人の憲法学者全員に違憲と判断された話も出てくる。最後に誰かが一言「このまま縮小させた方が国家のためになろう」。テープはここで終わっている

▼以上は、もちろん記者の創作である。畏れ多くも朝日新聞の名コラムニスト、故深代惇郎さんのある日の「天声人語」から体裁を拝借した

▼だが、先月25日の自民党若手議員の勉強会「文化芸術懇話会」の一幕を見ると、永田町では、本当にこんな会話がされていそうな気がする。記者の杞憂(きゆう)だろうか。