【参院選2019 大阪選挙区】「ささやかで、かけがえのない自由を守る」 亀石倫子候補(立憲民主党)

  弁護士として生活現場を知り、当事者の声に向き合い続けた亀石倫子候補(45)は、「ささやかで、かけがえのない自由を守る」というキャッチコピーを掲げ、立憲主義に基づいた政治を求める。

 

取材日=6月30日 (取材・写真)=鶴

 

 

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25回参議院選挙が7月4日に公示され、21日の投開票日に向けた選挙戦がスタート。大阪選挙区からは改選数4に12人の候補者が立候補した。本紙では6月26日までに出馬を表明した10陣営に取材を行い、若者目線で政策を聞いた。若者に関係する9つの質問を用意し、回答に応じて一部質問を加えた。

東徹(日本維新の会)梅村みずほ(日本維新の会)太田房江(自由民主党)尾崎全紀(NHKから国民を守る党)数森圭吾(幸福実現党)佐々木一郎(労働者党)杉久武(公明党)辰巳孝太郎(日本共産党)にしゃんた(国民民主党)

※敬称略 50音順

 

※大阪選挙区からは他に足立美生代氏(オリーブの木)と浜田健氏(安楽死制度を考える会)が立候補しています。

 

※立命館大学新聞社としては、特定の政党や候補者の政治的主張に同意することはありません

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Q なぜ参院選に出馬するのですか?

 弁護士として光が当たらない人の存在を見てきて「そういう人のために何かできないか」と思い、出馬しました。もともと弁護士を目指したのは「女性でも、年をとってもやりがいを持って一生働けるから」です。一般企業を経て35歳で弁護士になり、主に刑事事件を担当する刑事弁護人の道を歩んできました。ただ弁護士として、司法の限界を感じることがありました。権利や自由のために戦い、勝訴しても、法改正や政策が変更されない限り、社会は変わりません。例えば捜査令状無しでのGPS捜査を違法化する「GPS捜査事件」では、最高裁が「立法措置が必要」と判断を示したにも関わらず、2年以上立法が進んでいません。「彫師に医師免許を求めるのはおかしい」と訴えた裁判では、高裁で逆転無罪判決を勝ち取ったのに立法府も行政も動きません。そこにもどかしさを感じました。

 当事者の声をきちんと立法府で反映し、必要な法律制定や実態に合った法改正が必要です。選択的夫婦別姓や同性婚を求める裁判が行われていますが、多様化したライフスタイルに法律が追いついていません。今の政治家は国民の大多数の生活実態を分かっていないように見えます。弁護士として10年間生活現場を知り、当事者の声に向き合ってきた私だからこそ、暮らしやすい社会を作っていきたいです。

Q 当選したらもっとも注力したい政策は何ですか?

 刑事弁護人の私だからこそ、「権利と自由」の必要性を強く訴えていきたいです。

秘密保護法や共謀罪、安保法制改定もそうだと思いますが、憲法上保障されている自由を脅かす法律がどんどん数の力で通っています。民主主義の大前提の部分がだいぶ弱くなっているのではないでしょうか。弁護士は法律の範囲内でしか人を救うことができませんが、その法律自体に問題があると救いようがないです。

 昨秋に出馬表明をしてから「ささやかで、かけがえのない自由を守る」というキャッチフレーズを打ち出してきました。人から見たら「ささやか」かもしれませんが、当事者にとっては「かけがえのない」自由がありますよね。得票には繋がりにくい部分かもしれませんが、憲法上の権利や自由を守りたいです。

Q なぜ今のタイミングで出馬されたか?

 「選挙に出ませんか」と立憲民主党から声がかかったのがきっかけです。迷いましたが出馬を決めたのは、参議院議員は6年間身分が保証されているので、腰を据えてやりたいことができるからです。あと改憲に意欲を燃やしている一国の総理大臣とそのことへの空気感に危機感を覚えたこともあります。年齢的にもやるのだったら今しかないと。

 同世代の声を届けなければならないという思いもあります。私の世代はロストジェネレーションと言われていて、経済的に余裕の無い人が多い層です。収入が低くて結婚ができなかったり、結婚しても子どもを生む余裕がなかったりします。

 そのことに関連して中高年のひきこもりなど「社会からの孤立」もキーワードだと思います。私は弁護士として家族間殺害など「社会の闇」に立ち向かってきました。平成30年間の政治の結果として出来てしまった「格差の拡大」と「社会からの孤立」を解決することが、次世代の政治家の課題だと思っています。例えば引きこもりについてはNPOが支援をしていますよね。そうしたノウハウのあるNPOや民間の取り組みをどう政治がサポートできるかも大切だと思います。

Q 個別の政策のスタンスについても聞いていきたいと思います。非正規雇用やワーキングプアにはどう取り組みますか?

 やはり非正規雇用者は増えすぎたと思います。企業の便利な調整弁としての非正規雇用では、個人の尊厳にも悪影響を与えます。正規雇用化を進めるために、企業における非正規雇用の割合に上限を設けるなどの施策が必要だと思います。

 加えて非正規雇用者のコストを上げることが、正規雇用の増加に繋がると考えています。非正規雇用者はボーナスや社会保障を受容できないリスクを抱えています。非正規雇用者の給与を上げないと、企業に都合よく使われるわりに合いません。具体的には、最低賃金の引き上げに繋がると思います。立憲民主党は「(最低賃金を)5年以内に1300円にする」と公約していますが、私はできるだけ早期に1500円にする必要があると思います。ただ中小企業や零細企業にとっては、いきなり賃金が上がると大変です。だから社会保障費の負担を軽減するなど、プラスマイナスをゼロにしなければなりません。

Q 少子高齢化が進行しています。社会保障制度は維持できるのでしょうか?

「老後に備えて2000万円が必要」という報告書があったけれど、当然そういう面もあると思います。ただ賃金が安かったら、貯金どころか生活もできないですよね。今のままだったら、年金制度は維持できないと思います。

 生活ができない人もいる一方でものすごい富裕層もいます。資産や収入を考慮して、できるだけ実質的な平等を図る必要があると思います。

Q 大学生としては学費の問題が身近です。今年5月には「高等教育無償化法」が成立しましたが、亀石候補の立場を教えてください。

 少子化が進行する中で、全ての子どもが充実した教育を受けられるようにしなければなりません。高等教育無償化法では、適用される世帯が極めて限定されています。ケチくさいなと思います(笑)。ただ全面無償化ということではなく、経済的余裕のある世帯からは徴収すべきです。

Q 消費税増税についてのスタンスは?

個人消費が冷え込んでいる中で消費増税をすると、経済は悪化します。日常のささやかで大事なものも削られます。今の時点での10%への引き上げは反対です。しかし、社会保障の充実のためにも消費税自体は必要だと思います。ただ現状では、消費増税に対する国民の納得も得られていません。

Q アベノミクスをどう評価しますか?

 まったく評価していません。景気や株価が良くなったと言いますが、それは数字上のことで大多数の国民に実感はありません。むしろ実質賃金は下がっています。私が20歳代の時とアルバイトの時給は変わっていません。恐ろしいことですよね。

Q「国の借金」が1100兆円を超えました。どういった意見を持っていますか?

 一部では「借金がいくら増えても問題ない」という現代金融理論が支持されています。でも私には机上の空論に見えて、いまいちピンと来ていません。だから「現代金融理論に賛成か?」と問われると、懐疑的ではあります。

Q では、財政再建に取り組むべきと考えていると?

はい。そうですね。経済の専門家では無いので、自信を持っては言えませんが。

Q 最後に若者に期待することは何でしょうか?

 「自由に生きちゃダメですか?」ということをすごく言いたいです。空気を読んで、自分を押さえつけていませんか?仕方が無いと諦めていることを、1つでも乗り越えると、自由になったり楽しくなったりします。

 あとは選挙に行ってほしいです。街頭に立っていて思うのは、若い人が政治に関心を示してくれないということです。その理由には「諦め」とか「無力感」があると思います。権利を行使するのは、気持ちの良いことです。一風堂が一昨年の衆院選で、選挙に行けば割引を受けられる「選挙割」を実施しましたよね。そういう動機からでも良いと思います。

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コメント: 1
  • #1

    水口栄一 (月曜日, 17 5月 2021 20:38)

    私は亀石倫子さんの刑事弁護人を読ませて頂いて、とても感動しました。亀石倫子さんのひたむきな生き方が伝わってくるからです。また参院選に出馬されたことも素晴らしいと思いました。だからこの記事は興味深く読ませて頂きました。ありがとうございました。