【参院選2019 大阪選挙区】「共笑な日本の実現に向けて」にしゃんた候補(国民民主党)

 スリランカ出身で31年前に来日したにしゃんた候補(50)は、中間層の底上げを政策に掲げ、「日本人の笑顔を取り戻したい」と意気込む。

 また最低賃金に関しては「2000円にチャレンジする」と大きな目標を掲げる。

 

取材日=6月30日 (取材・写真)=鶴

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

25回参議院選挙が7月4日に公示され、21日の投開票日に向けた選挙戦がスタート。大阪選挙区からは改選数4に12人の候補者が立候補した。本紙では6月26日までに出馬を表明した10陣営に取材を行い、若者目線で政策を聞いた。若者に関係する9つの質問を用意し、回答に応じて一部質問を加えた。

東徹(日本維新の会)梅村みずほ(日本維新の会)太田房江(自由民主党)尾崎全紀(NHKから国民を守る党)数森圭吾(幸福実現党)亀石倫子(立憲民主党)佐々木一郎(労働者党)杉久武(公明党)辰巳孝太郎(日本共産党)

※敬称略 50音順

 

※大阪選挙区からは他に足立美生代氏(オリーブの木)と浜田健氏(安楽死制度を考える会)が立候補しています。

 

※立命館大学新聞社としては、特定の政党や候補者の政治的主張に同意することはありません

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Q なぜ参院選に挑戦しようと思ったのですか?

日本への恩返しをしたいという思いがあります。僕は18歳の時に、片道切符と父親が自宅を抵当に入れて手渡してくれた7万円だけを持って、スリランカから日本にやってきました。それから31年間、日本人のおかげで大学の博士課程まで卒業させてもらって、今は大学教授を務めています。妻と2人の子どももいます。現時点で僕はハッピーです。その地位を投げ捨てて、政界に挑戦するわけですから、日本社会に恩返しをしたいという気持ちがあります。

Q 国会議員になったらやりたい政策は何ですか?

大きく2つあります。1つ目は「日本人の笑顔を取り戻す」ということです。僕が来日した1980年代後半はバブル景気で日本の人はみんな笑っていました。その笑顔が日本社会から無くなっています。理由は「中間層の破壊」だと思います。日本社会の最大の特徴であった分厚い中間層が破壊されて、格差が生まれている。その余波が社会の細部にまで行き渡っています。僕が教鞭を取る大学でも、経済的理由で学校を辞める子がいます。ある教え子は、親が奨学金を使い込んで、授業料を払えずに大学を辞めてしまいました。僕はその子を救えなかった。日本には同じように経済的理由で苦しむ子が何万人もいます。そういう子を救えるのが政治であると考えます。分厚い中間層は日本の経済的特徴であり、文化であり、日本そのものなのです。中間層の生活を底上げすることが大切です。

 

2つ目に「多様性への対応」があります。日本は多様性や変革への対応が遅れています。外国人労働者の受け入れという意味では、その在留資格を大幅に変更した改正入管法が4月に施行されましたが、これだけでは不十分です。外国人と「どう生きていくのか」という視点がないまま受け入れてしまうと、両者にとって不幸だと思います。統合政策も兼ね備えた「多文化共生社会基本法」が必要なのです。

Q 外国出身者だからこそ当事者目線を持てるのか?

 700人以上国会議員がいるのだから、僕みたいなのがいても良いのでは(笑)。「外国人」として日本で生活した経験もあるので、当事者としての感覚を活かせるのではないでしょうか。もちろん今回の選挙は勝ちにいきますが、一方でこの勝負に「負け」はないと思っています。僕が国政に挑むことは、今の社会に一石を投じることになります。僕のような人間が、堂々と政治に挑戦する社会になったのだと証明したいです。

Q 移民受け入れについてのスタンスは?

 難しい問題ですね。僕はこの問題をある意味で見守りたいと思っています。やはりコテコテの日本人が決定すべきことではないかと。あえて移民受け入れには慎重なスタンスです。

Q 具体的な政策について聞いていきたいと思います。まず少子高齢化が進行している社会で、社会保障制度は維持できるのでしょうか?

 今のままでは無理でしょう。最低限の所得を政府が保障する「ベーシックインカム」など色んな政策をテーブルに並べて議論する必要があると思います。「年金2000万円問題」に関しても、金融庁の報告書を麻生太郎金融担当大臣は受け取らなかったですよね。今の政治は不真面目です。国民民主党は「正直な政治・偏らない政治・現実的な政治」を掲げています。子どもでも分かる嘘がまかりとおる政治に腹立たしさと虚しさを覚えます。年金が2000万円不足するなら、隠すことなくオープンにすべきではないでしょうか。

Q「国の借金」が1100兆円を超えました。どういった意見を持っていますか?

 この問題もオープンにしていくべきでしょう。安易に個人の主観で話せる問題ではありません。今回の選挙では議題にすら挙がっていませんが、まずは議論する必要があります。

Q 大学生としては学費の問題が身近です。今年5月には「高等教育無償化法」が成立しましたが、にしゃんた候補の立場は?

これは歓迎すべき動きだと思います。ただ所得制限には納得がいきません。将来を担う子どもの将来については一律に保障すべきではないでしょうか。国民民主党は所得に関わらず一律に「月15000円」の児童手当給付を公約に掲げています。社会の財産である子どもたちの将来に対しては所得制限を設けるべきではありません。

Q 高等教育無償化法の財源は10月の消費増税分とされています。消費増税に関してどう考えますか?

時期がよくありません。国民民主党は「家計第一」を謳っていますが、家計が潤った上で徐々に進めていくべきです。国民の納得を得てから、消費税を上げて、社会保障費を賄っていく必要があります。ただ私としては、消費増税の前に所得税の税制改革が必要だとも思います。

Q ワーキングプアの問題にはどう取り組むのでしょうか?

私は大学でも大学院でも「日本的経営」を研究してきました。日本的経営の特徴は「終身雇用・企業内組合・年功序列」です。人間らしさを大事にしてきましたよね。それが非正規雇用の増大で崩れ去り、日本の技術力も担保できなくなっています。その人間らしさが無くなっている状況にストップをかけたいです。例えば正規雇用を促す企業に対しては社会保障費の半分を政府が保障するような仕組みが必要だと思います。

Q 最低賃金に関しての政策は?

 最低賃金2000円にチャレンジします。他国を見ても、過去10年間で賃金が20%以上増えている中で、日本は実質賃金が下がっていますよね。中間層の分厚さを復活させる中で一番良い手立てが、実質賃金の引き上げだと考えます。最低賃金を引き上げることで正規雇用が増えると思います。非正規雇用の賃金を上げると、正規で雇用する方が得だと気づくのではないでしょうか。

Q 賃金を大幅に引き上げると、中小企業などは倒産するのでは?

国が中小企業の負担を軽減するために、初回保険料の事業主負担分を肩代わりするなどの政策は必要です。ただ最低限の賃金を払えない企業は、社会的使命を失っているとも考えます。そうした部分はドライに見ていく必要があるでしょう。

Q 最後に若者に期待することは何でしょうか?

枠にはまることなく自由な発想で挑戦してほしいです。みんな傘の中に入っているけど、一回飛び出してください。濡れるかもしれませんが。

志を持ってほしいとも思います。僕の場合は「共笑(ともえ)な日本を作る」ことが志です。共生だけだとダメなのですね。その質を高めていかないと。若者にも志を持って、飛び出してほしい。僕は大学の教員をやっているけど、みんな小さくまとまっていると思います。堂々と冒険してほしいです。そしてちゃんと勉強して、将来の問題を考えてほしいです。