全国初の女性都道府県知事である太田房江候補(68)は、大阪府知事の経験(2000‐2008)から、「東京一極の是正」を掲げる。若者に対しては「やってみなはれ精神でのチャレンジを」とエールを送る。
取材日=6月27日(取材・写真=鶴)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
第25回参議院選挙が7月4日に公示され、21日の投開票日に向けた選挙戦がスタート。大阪選挙区からは改選数4に12人の候補者が立候補した。本紙では6月26日までに出馬を表明した10陣営に取材を行い、若者目線で政策を聞いた。若者に関係する9つの質問を用意し、回答に応じて一部質問を加えた。
東徹(日本維新の会)梅村みずほ(日本維新の会)尾崎全紀(NHKから国民を守る党)数森圭吾(幸福実現党)亀石倫子(立憲民主党)佐々木一郎(労働者党)杉久武(公明党)辰巳孝太郎(日本共産党)にしゃんた(国民民主党)
※敬称略 50音順
※大阪選挙区からは他に足立美生代氏(オリーブの木)と浜田健氏(安楽死制度を考える会)が立候補しています。
※立命館大学新聞社としては、特定の政党や候補者の政治的主張に同意することはありません
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Q なぜ参院選に挑戦しようと思ったのですか?
政治家として「やり残したこと」に取り組むために立候補しました。
東京一極集中が止まらないのですよね。人口や経済などあらゆるものが東京に集中しています。東京一極集中は多様性を阻害する原因になると思います。日本は災害の多い国ですし、経済の強みという意味でも多様性が大きな原動力になります。
Q 多様性とは何ですか?
東京は官僚社会で大阪は商売の街です。名古屋はまた別の文化ですね。国の強さというのはそういう多様性が折り重なったものです。人口減少社会では一極集中が進行しますが、日本の発展を考えた時にそれではいけません。そういう意味では大阪が先導して二極、三極を作らなければなりません。
「地方創生」は私のライフテーマです。その思いの中で「大阪・関西万博」という好機が回ってきました。やはり一極集中を是正する上で万博はSDGs(持続可能な開発目標)の実践の場です。この国を持続可能にするには「関西を熱く」していく必要があります。
Q 参議院議員として6年間で取り組んだことは
一番、大きいのは万博の開催を決めたことです。維新の成果だと思われているけれど、政府や経産省も一丸となって招致しました。あとは中小企業政策です。大阪は中小企業の街ですよね。事業承継税制や固定資産税など中小企業の負担となる税制の改革に力を尽くしました。
Q 再選したら6年間でやりたいことは何ですか?
万博の中でSDGsを具体化していくことです。持続可能な社会という意味では健康寿命を伸ばすことが大切だと思います。大阪を健康産業の拠点にします。共に支え合い、助け合うのが関西の伝統としてありますので、あらゆる立場にいる人がいきいきと、夢と希望を持てる社会を作りたいです。
Q 個別の政策について聞いていきたいと思います。まず少子高齢化が進行している社会で、社会保障制度は維持できるのでしょうか?
経済を発展させることで税収を増やす。そのことに尽きます。経済を強くしていくことが社会保障制度の維持のためにはもっとも重要です。「年金2000万円不足問題」については、一部分を突いたもので誤解を増幅してしまった部分もありました。
Q 少子高齢化が進行すると、現役世代の負担が増加しますよね?
全体像を見ないといけません。雇用を増やし、支える人数を増やすことが大切です。安倍政権になって380万人も雇用が増えています。「一億総活躍社会」を掲げていますが、女性やシルバー層の活用も進めています。また今年4月には改正入管法が施行され、外国人の就労も広がりました。雇用の機会を増やすと同時に経済政策で所得を増やし、年金制度を維持します。
Q 外国人労働者の問題に言及されましたが、どういう風に受け入れを進めていくべきですか?
安易に「人口が減少するから、外国人労働者をどんどん増やしていこう」という考えには反対ですし「移民政策」は取りません。ただ日本にはすでに146万人(2018年10月末時点)の外国人労働者がいますし、良い人材に来てもらうためのシステムづくりが必要です。アジア各国で出生率が低下していて、これからは人材を奪い合う時代が始まります。同一労働同一賃金を始めとして、真の共生社会を作るための努力をしなければなりません。
近年は「おもてなし」という日本の精神が良い意味で広がりを見せています。共生社会が根付いていく素質が日本にはあると考えています。
「きめ細かい最低賃金の在り方を模索するべき」
Q 法人税引き下げなど自民党の政策には「一部の大企業を優遇している」という批判もあります。太田候補はどう考えますか?
持続可能な社会のためには、国際競争力のある大企業に世界中で活躍してもらわなければなりません。まだ法人税は世界的に見て高いのだから、下げる方向性を変えるべきではありません。企業の内部留保が非常に多いことは問題です。2年間で50兆円近く増えたそうですが、従業員の給与はあまり増えていない。血の循環で例えると動脈瘤となって循環が行き詰まっているので、血流を良くしなければなりません。これは政治課題ですので、自民党が先陣を切って進めていきます。具体的には経済界に向かって3%の賃上げ要求や最低賃金の引き上げということになるでしょう。定量的な目標を示す必要があります。
Q どう中小企業をカバーしていきますか?
中小企業も「働き方改革」を含めて、改革すべき方向性に乗ってもらわなければなりません。コストのかかる話ですので、他の部分で中小企業の負担を減らします。例えばこれまでも事業承継税や相続税、固定資産税のゼロ化を進めてきました。こうした誘導政策は中小企業だけでなく、個人事業主まで適用していく必要があります。
Q 最低賃金に関してはどう考えますか?
上げていくことは必要です。ただ出来ない目標を掲げても仕方がありません。地域の特性や企業格差を念頭に入れて、きめ細かい最低賃金の在り方を模索していくべきです。
Q 大学生としては学費の問題が身近です。今年5月には「高等教育無償化法」が成立しましたが、太田候補の立場を聞かせてください。
高等教育の無償化は進めていくべきです。私自身も裕福な家庭で育ったわけではなく、企業から奨学金を頂いて大学を卒業しました。ただ「全体に広げるか」と言うと、中学を卒業して大工になる人もいますし、ものづくりの世界に入られる方もいます。こういった議論もあって全体には拡充しませんでした。
Q そうは言っても非課税世帯に無償化を限定する高等教育無償化法はいかがなのでしょうか。
徐々に拡充していくと思いますよ。世界を見てみると、修士号や博士号を持っていることが重要視されますし。今の法案を出発点として、世界的なスタンダードに追いついていかなければならないと思います。
Q 高等教育無償化法の財源は10月の消費増税分とされています。消費増税に関してどう考えますか?
今回の増税は、社会保障制度を持続可能なものにしていくためにやむを得ないです。地方創生の観点で言うと、消費税は一極集中の在り方が他の税金よりも緩やかですし、消費税を中心とした税制の確立は日本の長年の課題でした。増税分はこれまで高齢者に集中しがちだった社会保障を若い世代に広げていくものですので、ご理解いただきたいです。
Q 消費税引き上げで経済が失速することが懸念されています。
8%への増税時の経験を活かして反動減対策を取ったので、その指摘はありえないと思います。また中小企業への影響を軽減するためのキャッシュレス化推進やポイント還元にも取り組みました。
Q 消費税はこれからも引き上げていくべきですか?
シンクタンクの計算では30%近くまで引き上げる必要があると言いますが、これは今の人口構造を前提にした場合のものです。「一億総活躍社会」と組み合わせて考えていけば、そこまでの増税は必要ないでしょう。また仮に増税を進めるのであれば、国民的議論が必要です。
Q アベノミクスの成果についてはどう考えますか? 「実質賃金が上がっていない」という批判もありますが。
アベノミクスの成果は大きく出たと思いますね。「閉塞感のあるデフレ時代」を経験した人間として申し上げると、やはりアベノミクスの効果は大きかった。有効求人倍率も大卒の就職内定率も、就職氷河期世代と比べると夢のような数字でしょう。
Q その成果の一方で「国の借金」は1100兆円を超えました。どういった意見を持っていますか?
大事なことは借金の金額よりも、それを上回る税収があることだと思います。安倍政権が財政再建をないがしろにしているとは思いません。「身を切る改革」を主張している人もいますが、インフラ整備など投資すべきところには投資する必要があります。
Q 最後に若者に期待することは何でしょうか?
関西の若者は元気です。「やってみなはれ精神」など東京にはないスピリッツがあります。新しいものを生み出す起業家精神に期待しています。そのためにチャレンジする環境を作ります。大阪万博開催はそういう意味もあります。新しい産業育成の契機にしてもらいたいです。
コメントをお書きください