国際情勢を身近に:国際平和ミュージアム 春季特別展

 4月14日(土)から7月16日(月・祝)まで本学国際平和ミュージアムにて企画展『ヤズディの祈り 林典子写真展』が催されている。

林典子氏はフォトジャーナリストとして世界各地を飛び回り、ニュースにはならない人々の物語を伝え続けている。今回の写真展では2016年12月に出版された写真集『ヤズディの祈り』から珠玉の作品が出展されている。 

ヤズディは独自の宗教や信仰を持ち、イラク、イラン、トルコ、シリア周辺地域で暮らしている少数民族であり、人口は世界全体で60万人ほどだとされている。ヤズディ教の教義は口承でのみ伝えられ、教徒の子として生まれなければ教徒にはなることが出来ない少数派宗教である。

しかし、ヤズディはその信仰を「悪魔崇拝」とするISなどから幾度も弾圧や迫害を受けてきた。そして2014年に大規模な襲撃をうけ、約5000人が殺害され、6000人を超える女性が性的被害をうける惨劇に見舞われ、故郷を追われることになってしまった。

残された人々は難民としてドイツなどに渡るか、難民キャンプや逃げ込んだ山林など故郷を離れて暮らすことを余儀なくされている。

この展示では、何世代にもわたり営んできた日常を突然奪われたヤズディの人々を、惨劇の被害者としてではなく、今を生きるひとりの人間として捉えた写真を多く見ることが出来る。

  「ヤズディの人々に降り掛かった悲劇ではなく、私たちと同じように生きている個人に視線を向けることで、学生の身近な関心事になればいい。これからの国際世界の担い手となる学生が考える機会になればいい」と展示担当の田鍬美紀さんは言う。

なおこの写真展に関連して講演会と映画上映が企画されている。6月2日(土)の13時半から開かれる講演会では、NPO法人「JIMNET」の事務局長を務める佐藤真紀氏が登壇する。JIMNETはイラクを中心に医療支援を行なっている団体で、佐藤氏は活動中に交流したヤズディの人々についての講演を行なう予定だ。

6月19日(火)、21日(木)に上演予定の「ラジオ・コバニ」はシリア北部のクルド人街コバニがISの占領から解放され、復興していくまでの3年間を描いたドキュメンタリーである。ISとクルド人民防衛隊との、数ヶ月に渡る激しい戦闘の舞台となったコバニ。2015年1月にISから解放され、人々はコバニに戻ってきたが、そこで待ち受けていたのは瓦礫と化してしまった故郷だった。人々が途方にくれる中、20歳の大学生ディロバンは友人と共にラジオ局を立ち上げ、ラジオ番組「おはよう コバニ」の放送を始める。大学生が始めたラジオ番組はやがて街を再建しようとする人々の希望となっていく。

いずれのイベントも本学生は無料・予約不要で参加することができる。国際社会と繋がる第一歩として、イベントに参加してみたらどうだろうか。 (小板橋、鶴)

立命館大学国際平和ミュージアム:http://www.ritsumei.ac.jp/mng/er/wp-museum/index.html