【参院選2019 大阪選挙区】「資本主義を打倒し、社会主義の実現を」佐々木一郎候補(労働者党)

 労働者党から出馬する佐々木一郎候補(68)は、現在の資本主義を問題視し、社会主義の到来を展望する。そのために「資本に対する戦いを強める必要がある」と強調する。

取材日=6月28日 (取材・写真)=鶴

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25回参議院選挙が7月4日に公示され、21日の投開票日に向けた選挙戦がスタート。大阪選挙区からは改選数4に12人の候補者が立候補した。本紙では6月26日までに出馬を表明した10陣営に取材を行い、若者目線で政策を聞いた。若者に関係する9つの質問を用意し、回答に応じて一部質問を加えた。

東徹(日本維新の会)梅村みずほ(日本維新の会)太田房江(自由民主党)尾崎全紀(NHKから国民を守る党)数森圭吾(幸福実現党)亀石倫子(立憲民主党)杉久武(公明党)辰巳孝太郎(日本共産党)にしゃんた(国民民主党)

※敬称略 50音順

 

※大阪選挙区からは他に足立美生代氏(オリーブの木)と浜田健氏(安楽死制度を考える会)が立候補しています。

 

※立命館大学新聞社としては、特定の政党や候補者の政治的主張に同意することはありません

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Q なぜ参院選に挑戦しようと思ったのですか?

 労働者党は全国から10人の候補者を立てて確認団体として挑戦します。候補者の1人に推薦されましたので出馬しました。大阪では、安倍政権の補完勢力である維新との戦いだと位置づけています。

Q 国会議員になったらやりたい政策は何ですか?

 労働者の切実な問題である長時間労働と差別労働の一掃を強く訴えていきたいです。「働き方改革」が謳われていますが、実態は月100時間までの残業を認めるなど、見掛け倒しの政策です。こうした実態を訴えていき、本当の意味での「同一労働同一賃金」を実現する法的な整備が必要ですね。

Q 具体的な政策について聞いていきたいと思います。まず少子高齢化が進行している社会で、社会保障制度は維持できるのでしょうか?

 少子高齢化は社会の趨勢として仕方がないのかなとも見ています。安倍政権は少子高齢化を危機的に見ています。それはGDPが低下し、国力が下がるからでしょう。一方で人口が減少しても、1人当たりGDPは減らないかもしれません。必ずしも少子高齢化で国力が衰えるとは思っていません。その中においても、社会の発展や生活の向上を図ることは可能です。

 少子高齢化で年金が危機というのは高齢者の発想です。年金問題の背景にあるのは定年制度だと思います。まだまだ働けるにしても、資本にとって効率の悪い高齢者の首を切って若い人に変えていくというのが定年制度の側面です。定年制度の表裏に年金制度があると思っていて、まだまだ働ける高齢者には働く場を提供する必要があります。そうすれば高齢者も生計を得ることができますし、年金に依ることがなくても自分の賃金で生計を立てることが可能です。それと平行して今の厳しい賃金制度の改革があります。それぞれの能力に応じた働き方を可能にして、厳しい労働環境を緩和させていく。高齢者にしても、今の状況では働きづらいですよね。賃金制度の変革と定年制度の廃止を組み合わせていく必要があります。

Q 年金以外の社会問題についてはどういう意見ですか?

 介護問題がありますよね。介護労働者は安い賃金で、長時間労働を強いられています。非常に厳しい仕事の条件を、一部の介護労働者に押し付けている側面が、今の介護にあると思います。押し付けでなくむしろ社会全体で、労働の一部を介護に振り向けるという形の新しい社会システムが必要です。自分の親なり高齢者なりをそれぞれが時間を割いて介護するということです。

Q アベノミクスをどう評価しますか?

「大規模な金融緩和で、デフレを脱却して経済成長を遂げる」という謳い文句だったのですが、赤字財政だけを膨らませて一部の大企業を富ましています。働く者にはなんの利益ももたらしていません。その意味でアベノミクスは失敗だと見ています。

Q 「国の借金」が1100兆円を超えました。どういった意見を持っていますか?

結局、安倍政権そのものが財政再建を謳っていながら、真面目に取り組まずバラマキ政策をやっているのが現状なわけですよね。膨大な赤字をふくらませる政策には危機感を持って見ています。大増税をして赤字を帳消しにするという形でしか解決しない状況になっています。

Q 財政再建の1つに消費税増税があると思います。

消費税そのものが労働者への追加課税として、大きな重石となって生活にのしかかっています。低所得者が一番負担することになる消費税そのものに反対しています。

Q 大学生としては学費の問題が身近です。今年5月には「高等教育無償化法」が成立しましたが、佐々木候補の立場はいかがでしょうか?

 経済的理由から学べない人の救済だと思いますが、今の大学は、高い地位や良い給料を得る手段としての側面が非常に大きいですね。ですから今の大学の在り方も考えないとなければなりません。そういう大学に進む人の学費を、無条件に無償化するというのには抵抗がありますね。

Q では今の大学の在り方を施政者として、どう変革しますか?

今の大学の背景にあるのは個人主義です。そのまた背景に資本主義の現実があります。競争を勝ち抜かないと、生計を立てられませんよね。そうした社会を変えることで、大学の意義そのものが変わります。大学に限らず小中校の教育も「生産的労働」と切り離されていますよね。社会的労働と教育を結びつける必要があります。労働と教育が結びつくことによって本当に必要なものがわかってくると思うのですよ。

Q 労働と教育を結びつけるとはどういうことですか?

端的に言うと仕事をしつつ勉強をするということです。「勉強だけできれば良い」という考えでは、いびつな子供が育ちます。逆に労働と結びつかない教育はあるのでしょうか。人類は、労働と結びついて知識や経験を身につけてきたわけですよね。それが近代社会になって教育が労働から切り離されてきました。もっと有効に能力を活かすためには、労働と結びついたリアルな形で若者が大きく成長する教育が要求されるのではないでしょうか。

Q 高等教育の無償化に絞って話をしてください

大学に行かない人との差別を温存させる、助長させることが高等教育の無償化にありますので無条件に賛成とはいきません。大学教育自体が差別を生み出していますので、それに賛成するわけはありません。

「賃金制度を廃止し、社会主義を目指す」

Q ワーキングプアの問題にはどう取り組むのでしょうか?

 労働問題は法律どうこうよりも労働者が団結して、経営者や資本に戦いを積んでいき、要求を実現するものだと思っています。権利を勝ち取るための戦いを呼びかけて、労働運動を広げていきたいです。

Q 最低賃金についてはどう考えていますか?

 賃金は高い方がもちろん良いです。ただ私達としては賃金制度そのものを廃止していく戦いを広げていきたいという気持ちがあります。労働者を資本の支配の元に縛りつけている実態が、資本主義社会の根底にあります。労働者党はその資本主義の根底を変えていこうと考えているわけですから、賃金制度を前提とした最低賃金の話ではなく、賃金制度を廃止していく方向に戦いを向けています。最終的には資本の支配がない、労働者が中心となった社会主義を目指しています。

Q 現在の政治状況では、社会主義への転換は難しいですよね。現状を踏まえた上で現実の社会をどう変えていきますか?

 大上段に「社会主義を目指す」と言っても誰も振り向いてくれないのは事実です。ですから現実に起きている問題を分析し、資本主義の具体的問題点を踏まえた上で社会主義の必要性を訴えていきたいです。例えば安倍政権の進めている憲法改定の問題に関しても、労働者党は「憲法を守れ」という立場で安倍改憲に反対しているわけではありません。労働者党はむしろ「憲法を変えていく」ということを具体的に提起していきたいと思っています。憲法そのものが資本社会を支えているので「憲法を守れ」と言うことは資本の支配を認めることになる。例えば今の憲法が持つ天皇制は身分制の最たるものです。民主主義に反する天皇制条項を変えていく。そうした形で主張を展開したい。

Q 逆に佐々木さんが理想とする体制を取る国はありますか?

中国にしても北朝鮮にしても、実態は社会主義ではなく国家が資本を独占する国家資本主義ですよね。そういう意味で、世界中に社会主義の国はないと考えています。

Q 民主主義的価値と社会主義は併存しますか?

労働者党は今の社会が享受している自由はもっと広がっていくと考えています。むしろ社会の発展の中に社会主義があります。

Q 日本を政治家としてどう形作っていきたいですか?

 労働者が国民の大多数を占めているわけですから、まずは労働者が大きな力を付けていくことが大切だと考えています。その上で抑圧している資本にたいする戦いを強めていき、社会主義を基盤とした社会を目指していきたいと思っています。