杉久武候補(43)は、公認会計士の経験から「財政の見える化」に取り組んだ1期目の成果を強調する。
また厚労省の不正問題など近年、頻発した行政の不適切な事案を挙げて、「行政の透明化が必要だ」と訴える。
取材日=6月26日 (取材・写真=鶴)
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第25回参議院選挙が7月4日に公示され、21日の投開票日に向けた選挙戦がスタート。大阪選挙区からは改選数4に12人の候補者が立候補した。本紙では6月26日までに出馬を表明した10陣営に取材を行い、若者目線で政策を聞いた。若者に関係する9つの質問を用意し、回答に応じて一部質問を加えた。
※大阪選挙区からは他に足立美生代氏(オリーブの木)と浜田健氏(安楽死制度を考える会)が立候補しています。
※立命館大学新聞社としては、特定の政党や候補者の政治的主張に同意することはありません
東徹(日本維新の会)梅村みずほ(日本維新の会)太田房江(自由民主党)尾崎全紀(NHKから国民を守る党)数森圭吾(幸福実現党)亀石倫子(立憲民主党)佐々木一郎(労働者党)辰巳孝太郎(日本共産党)にしゃんた(国民民主党)
※敬称略 50音順
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Q 杉候補は現職ですが、なぜ参院選に出馬するのでしょうか?
「財政の見える化」をさらに進めるためです。議員になる前、私は15年間公認会計士をしていましたが、民間と同じように国でも「予算の透明化」、「財政の見える化」を進めることが大事と考えていました。そこで2013年の初当選後、私は国会で行政サービスの改革に取り組んできました。もちろん行政サービスは採算性や効率性だけで判断すべきではありません。しかし行政のムダには目を向ける必要があります。例えば「救急車が1回出動すると、いくらかかるのか」など行政サービスのコストを明らかにすることで、肌感覚で国民の皆様に関心を持っていただけるのではないかと考えています。
Q 再選したら次の6年で、どういった政策に注力したいですか?
衆参両議員で公認会計士の資格を持つのは7人しかいません。私は経験を活かしてさらに「財政の見える化」を進めていきたいと思います。また不正が起きない行政組織の確立にも力を尽くします。ここ数年、厚労省の不正問題や財務省の公文書改ざんなど行政の不適切な事案が続きました。公認会計士は決算だけでなく企業の内部統制にも携わるので、その知見も生かし、行政を透明化する仕組みを作っていきたいです。
Q 具体的な政策について聞いていきたいと思います。まず少子高齢化が進行している社会で年金制度を維持することは可能でしょうか?
年金は制度上、現役世代の保険料によって年金受給者を支えています。しかし少子高齢化により現役世代の負担が増える懸念があります。そこで私たちは基礎年金の半分に税金を投入することで将来世代も安心して受給できる仕組みを作りました。今後も財政検証をつぶさに行いながら年金制度を確実に維持します。
Q 大学生としては学費の問題が身近です。今年5月には「高等教育無償化法」が成立しましたが、杉候補の立場は?
公明党は結党当時から教育に力を入れてきました。教育は未来への投資です。家庭の環境によって教育を受ける機会に格差があってはなりません。そこで高等教育無償化法によって、給付型奨学金の拡充や授業料の減免を進めます。これは非常に重要な政策ですので、将来的には対象世帯を拡大すべきです。そのほか既卒者など、奨学金を返済している人をサポートしていく必要もあります。例えば企業が奨学金の一部を肩代わりする取り組みなど、海外の事例を参考に、背中を押してあげられるような政策に取り組んでいきたいと思います。
Q 高等教育無償化法の財源は10月の消費増税分とされています。消費増税に関してどう考えますか?
医療、年金、介護といった我が国の社会保障制度を支えるために、消費税率の引き上げは必要です。しかし8%引き上げ時の教訓から、今回の税率引き上げには、軽減税率をはじめ反動減対策に万全の対策を講じてきました。生活に与える影響を最低限に留めながら、増収分は社会保障の充実に加え、教育の無償化にも充てていきます。
Q 非正規雇用などワーキングプアの問題にはどう取り組むのでしょうか?
非正規雇用の制度自体には「自由な時間に働きたい」など、希望して選んでいる方もいます。大事なことは「正規で働きたいけど、非正規でしか働けない人」が正規で働ける環境を作っていくことです。就職氷河期世代で就職できず苦しんでいる人を就労に結びつけ、定着させることは大きな課題です。しかし個々に事情は異なりますので、包括的にではなく一人ひとりに寄り添う必要があります。そして福祉や社会保障の枠内で支えられている人を、支える側にシフトしていくことが大切です。また孤立が深刻になっていることから、取り残される人を作らない仕組みづくりを、民間とも協力して実現したいと思います。
「経済の足元を固め、財政健全化を目指す」
Q 最低賃金に関しての政策は?
最低賃金は大阪府で936円ですが、7年前は800円でした。この最低賃金上昇の流れは続けていくべきだと思います。ただ、いきなり上げると中小・小規模事業所は立ち行かなくなりますので、経済状況を見据えつつ全国加重平均1000円を実現していきたいと思います。また、学生にとって身近な税制も変えるべきです。例えば時給1000円を超えると、「103万の壁」を超える可能性がありますよね。
Q 103万円までバイトをする原因には、大学生の経済的困窮があると思います。学生が生活を切り詰める現状をどう考えますか?
難しい問題ですね。「学業を疎かにして、どんどんバイトをしてくれ」とは言えません。給付型奨学金を拡充し、学業に専念できる環境を作ることが本筋でしょう。その中で税制を含め、働きやすい環境づくりをしていかなければなりません。
Q アベノミクスをどう評価されますか?
財政政策と金融政策を一体的に実行する中で、一定の成果が出ていると評価しています。
Q「国の借金」が1100兆円を超えました。どういった意見を持っていますか?
将来世代に負担を残さないために、長い目では財政健全化を目指していかなければなりません。ただ国はプレーヤーとしても規模が大きいので、いきなり緊縮財政すれば社会全体が大変なことになります。今、経済は着実に上向き、所得税や法人税収も増えています。経済の足元をしっかりと固め、少しずつプライマリーバランスを黒字にすべきです。一方、日本は自然災害の多い国ですから、被害を最小限に抑えるために必要な公共事業は今後も継続して行うべきです。
Q 30年後にどのような日本を作りたいですか?
人生100年時代と言われる中で「誰もが幸せに暮らしていける社会」を作っていく必要があります。年を重ねても健康であり続けることが大切ですし、その社会の実現に向けて政治が何をやっていくべきかを考えています。
Q 最後に若者に期待することは何でしょうか?
もっと政治に関心を持って投票に行ってほしいと思いますし、若者の声で政治が変わることを感じてほしいです。私は国会議員の中では若い部類に入るので、若者の声を国政に生かしてきました。これまでには例えば携帯電話会社を変えても電話番号を引き継げるモバイルナンバーポータビリティ(MNP)制度の創設やスマホ料金の値下げ、さらには2年縛りの解消を盛り込んだ電気通信事業法の改正にも取り組んできました。身近な問題を契機に政治に関心を持っていただき、投票に行ってほしいと思います。
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