「8時間働けば、普通に暮らせる社会」を目指す日本共産党の辰巳孝太郎候補(42)はその一歩として、参院選での必勝を誓う。また若者に向けては「無関心ほど民主主義を腐らせるものはない」と政治への関心を促す。
取材日=6月27日 (取材・写真=鶴)
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第25回参議院選挙が7月4日に公示され、21日の投開票日に向けた選挙戦がスタート。大阪選挙区からは改選数4に12人の候補者が立候補した。本紙では6月26日までに出馬を表明した10陣営に取材を行い、若者目線で政策を聞いた。若者に関係する9つの質問を用意し、回答に応じて一部質問を加えた。
東徹(日本維新の会)梅村みずほ(日本維新の会)太田房江(自由民主党)尾崎全紀(NHKから国民を守る党)数森圭吾(幸福実現党)亀石倫子(立憲民主党)佐々木一郎(労働者党)杉久武(公明党)にしゃんた(国民民主党)
※敬称略 50音順
※大阪選挙区からは他に足立美生代氏(オリーブの木)と浜田健氏(安楽死制度を考える会)が立候補しています。
※立命館大学新聞社としては、特定の政党や候補者の政治的主張に同意することはありません
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Q なぜ参院選に挑戦するのですか?
今回の選挙は日本の進路を決める、暮らしや平和を守るための大事な選挙だと思っています。「老後の生活に向けて2000万円を貯金しておきなさい」という金融庁の報告書を麻生金融担当大臣が受け取り拒否する出来事がありました。ありえないですよね。本来国会議員は、国民の関心が高い問題を受け止めて、どうすれば安心できる社会を作れるかを議論すべきなのに、彼らは都合の悪いものに蓋をしたのです。国民に対し、年金というトピックで、ご都合主義な政権運営の実態を分かってもらって、安倍政権を終わらせる一歩としたいと思っています。年金問題は安倍政権の象徴で、何やっても悪いという感覚がないのでしょうね。行き着く所まで行っているのですよ。
1つ大きかったのが2014年の集団的自衛権の行使容認です。「自衛隊は専守防衛の組織」というこれまでの自民党解釈を閣議決定で180度覆しました。その後に起こったのが森友問題です。「国家の私物化・虚偽答弁・公文書の改ざん」があったのに政治家は誰も責任を取らず、近畿財務局の職員が命を絶ちました。トップの責任に決まっているじゃないですか。民主主義は結果に対して責任を取らなければいけません。それなのに独裁国家のように居座る。そういう意味では民主主義そのものが問われていると思います。
Q 前回当選した2013年から、参院議員として6年間の任期で達成したことは何ですか?
6年前はブラック企業根絶を掲げて当選させてもらいました。国会で最初にやったことは「ブラック企業規制法案」の提出です。われわれが法案を出したことで、厚労省が約5000の事業所への調査に動きました。ブラックバイトの問題も取り上げてきました。労働基準法では1分単位で給料を計算する規定があるけど、セブンイレブンは遵守していなかった。この問題を国会で取り上げた後、セブンイレブンは改善しました。
Q 当選したら次の6年でやりたいことは何ですか?
子育て支援です。若者が希望を持てる日本にしたいです。社会や経済成長を考えると「希望する数の子どもを産める社会」にしなければなりません。子どもを諦める一番の理由は経済的負担です。その負担が軽減される社会を作りたいと思っていて、具体的な政策を言うと大学の授業料をすぐに半額にして、そして無償化を目指す。2012年に国連の人権A規約で日本は保留を外して、大学の授業料を無償化していく国際公約をしています。
Q 今年5月に高等教育無償化法案が国会で成立しました。どう考えますか?
4人家族で270万円の年収要件だから10人に1人ですよ。それに非課税世帯が授業料免除されるのは当たり前です。それから財源が消費税ですよね。消費税が上がったら、授業料も上がるので対象にならない人はいつまでも対象になりません。これについては絶対にアカンと思って反対しました。
Q では逆にどう無償化を進めていきますか?
先ほど申し上げたように、大学の授業料をすぐに半額にして、無償化を進める。半額無償化には1.3兆円かかります。あとは月額3万円の給付型奨学金を70万人に支給する。これが4200億円。加えて奨学金受給者の問題ですね。若者が借金を抱えて、社会人をスタートするのはおかしいので、金利を肩代わりします。これには400億円が必要です。学生がお金の心配をすることなく学べる社会を作りたいと考えています。
Q その財源は?
大企業への優遇税制にメスをいれます。バブルの時よりも大企業は儲けていますが、納税額は少ないです。ちゃんと税負担をしてもらえば4兆円、お金持ちにもうちょっと負担してもらえればもう3兆円。あとは米国への思いやり予算と辺野古の新基地建設を止めたら5000億円捻出できます。合わせて7.5兆円を消費増税なしに作ります。
Q 消費増税の話がありましたが、増税には反対しているのですね。
日本共産党は1989年の導入時から消費税に反対してきました。ただ、いきなり0にすると税収が20兆円不足するので、今回は「10%はダメだ」と提案しています。同時に税制の歪みを問題視しています。大企業ばかり優遇されるのはおかしい。まずは歪みを正し、7.5兆円の財源を生み出し、国民の将来不安を解消します。不安が解消され、好景気で税収が増えたら消費税を無くします。
Q 非正規雇用やワーキングプアの問題にどう取り組みますか?
「8時間働けば、普通に暮らせる社会」を作りたいです。長時間労働ははびこり、過労死は依然として無くならない。昨年は「働き方国会」といって、裁量労働制が審議されました。「働く時間が決まっていなくて、仕事量で決められる」と聞こえは良いですが、実態は何時間働けば良いのかわからないのです。
それから非正規雇用でも「8時間働けば暮らせる社会」の実現を目指すなら、最低賃金を引き上げる必要があります。最低賃金1000円、そして1500円へと。もちろん、いきなり賃上げしたら中小企業が大変なので、7000億円の賃上げ予算を用意して中小企業の社会保障費用を負担します。最低賃金は全国一律で良いと思っています。地方の人は自動車を使うので、実は都市部と地方部では生活費はそれほど変わらないのです。地方は賃金が低いから都市へと流れるのですから、一極集中がダメと言うなら、全国一律にすべきです。時給1000円でも年収計算したら約190万円です。時給1500円で約290万円です。(それぞれ1日8時間、週5日勤務で算出)時給1500円でも生活はしんどいです。1人では暮らしていけても、家族を養うのは難しい。だからそれくらいは当然だと考えます。
Q日本の社会保障制度は維持することが可能でしょうか?
大事なのは少子化を止めることです。それなしには細ぼっていくので、社会保障制度は安泰ではありません。逆に言うと、社会保障が貧弱だから、子どもを産めません。社会保障制度を守りつつ、少子化を克服する必要があります。本当に社会保障にお金を使っているのかを見ていかなアカンと思っています。もともと消費税は社会保障のために始まりましたが、消費税が上がるにつれて法人税が下がっています。消費税の税収は大企業の穴埋めに使われているわけです。おかしいですよね。税金の取り方を応能負担に戻すことで税収を増やしていかなければなりません。
Q 日本共産党は共産主義を目指しているのか?
われわれは綱領の中で「資本主義の枠内で2つの異常を正す」としています。1つは大企業言いなりの政治、もう1つはアメリカ言いなりの政治です。2つを正した上で、われわれは資本主義という制度を乗り越えて、搾取のない社会主義・共産主義の社会を作ると展望しています。ただ資本主義から移行する時も、日本の民主主義の成果は受け継がれていきます。一党独裁もやりません。
Q 共産主義と民主主義は共存することが可能か?
もちろん可能です。われわれは旧ソ連や中国の体制を本当の社会主義だとは思っていません。ただ具体的な国家像を聞かれた時に、今は本当の共産主義国家は存在しないのです。われわれは今の段階で「共産主義はこうあるべき」とガチッと決めるのはむしろ良くないと思います。資本主義の矛盾する部分を改革していくと。ただ資本主義の限り、どれだけ改革しても搾取は残ります。
Q アベノミクスをどう評価するか?
破綻ですね。株価は多少良くなりましたが、庶民の生活は良くなっていないですよね。いくらお札を刷っても、一番大事な賃金が上がっていないわけです。大企業が潤えば、労働者の賃金に反映されるというのはありえないです。借金だけ増やしてね。大企業の85%の筆頭株主は公的資金ですから。それこそ社会主義ではないかと(笑)。どれだけ統制経済やってるねん。
Q 国の借金の話がありましたが、どう考えますか?
僕はいくらでも借金をしても良いとは思いません。税収がバブルを超えたと言うなら、少しは減らしても良いと思います。いきなりはしんどくても、徐々に減らしていかないとならないです。税金の入り口と出口の両方の改革で無駄をなくしていくと。一番、無駄なのは防衛費ではないでしょうか。
Q 若者に期待することは
言いたいことを言ってください。おかしいことはおかしいと。間違っていても良いし、失敗しても良い。チャレンジをしてほしいです。それと政治に興味を持ってもらえれば、若者向けの政策が充実する可能性があります。もちろん僕らは若者向け政策をやっていますが、政権与党としてはそういう部分があると思います。無関心は権力者にとって一番楽です。無関心ほど民主主義を腐らせるものはありません。
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